それは一つ屋根の下で毎日暮らしているわけですから、貴女が健康には何分問題なく毎日を過ごしていることは承知しています。まあ、所謂常套文句なのです。特にこれといった意味もない。
この記事を書いている今現在は、五月七日土曜日、時計は午後十一時十分を指しています。
つまるところ、五十分後には五月八日。五月の第二日曜日。
今年の母の日にあたります。
さて、お母さん。私は貴女に言っておかなくてはならないことがあります。
貴女はよく私の部屋に突然押し入っては、部屋が汚い、と、
「これではまるでオタクの部屋だ」と文句を言っていましたね。
何の用もないのに部屋に入ってくることについては、この際目を瞑ります。
ここで正さなくてはならないのは、もっと別のことなのです。
貴女の認識には大きな齟齬が生じています。
「まるでオタクの部屋」なのではありません。
実際に、オタクの部屋なのです。
……貴女はそんなことは認められないかもしれません。
しかし非常に残念なことに、学生時代から今まで「一軍」に分類され、社会的ヒエラルキーの頂点に君臨してきたであろう貴女の、血の繋がった娘は。
……貴女の娘はコミュニケーション能力が欠如し、
休日は家に引きこもりゲームに没頭し、
画面を見つめ怪しく笑うオタクです。
本当にごめんなさい。できるならば、こんなことは言いたくなかった。
ただのオタクならまだ良かった。
私は、男性同士が恋愛しているのを見るのが好きなタイプのオタクです。
「腐女子」
これが世間一般に、私が分類される位置付けです。
貴女がさっき、部屋に押し入ってきた時。
私がなにくわぬ顔で持っていたのは同人誌です。
このような形で貴女に罪の告白をしたところで、ただの自己満足にしかならないことは理解しています。
しかしどうか、この懺悔を。エゴイズムに塗れた自己完結を、赦して欲しい。
そして。
そして願わくば、ノックなしに部屋に入ってくるのはやめて欲しい。
感謝を込めて。娘より