√3は3の倍数である

数弱は焦っていた。テスト終了まで、残り時間はわずか。依然として埋まらない解答欄。何か、何か書かなくては。数弱は、無心でシャープペンシルを走らせた。最後の気力を振り絞る。そこでテスト終了を告げるチャイムが鳴り響いた。——やりきった。白い解答欄の中で、『n=√3α(αは整数)よりnは必ず3の倍数となる』、この文字列が一際輝いていた。

卒業

 高校を卒業した。
 信じられないことだが、もう三年間が経ってしまったらしい。

 私の高校生活というのは、それはもう、青春とは程遠い。
 彼氏もいないし、そもそも恋の気配すらない。勉強もできないし、友達もなかなかできない。ないない尽くしである。
 それでも、どうしてなかなか、私はこの三年間でかなり性格が変わったらしい。自分が全てにおいて底辺であることに対し、さほど悲観的ではなくなった。

 大学生になった私、社会人になった私、変わらずメンヘラであると思う。自殺しよ、とかほざいてる暇があったら何もかも投げ出して寝ろ。ホモを読め。

 卒業の話をするはずが己のメンヘラ談義になってしまった。というのも、卒業したという実感がないのである。
 そのうちまた、重い荷物を背負って、「絶起」とツイートをして、始業に間に合うように走っている気がする。授業は寝るか内職をするかで、テスト数日前になってやっと課題をやり始める。
 フードコートで暮らす。部員でもないのに音楽室に入り浸る。夜中まで通話をしながらラーメンを啜る。
 またそんな日々が始まるのではないか、と思っている。きっと大学でも私は底辺である。

 けれども、これからは別々の進路ですね。
 私はなんとか生きていこうと思います。
 時々会うくらいが丁度いいんじゃないかな、と思います。お互い新しい環境で頑張りましょう。
 三年間ありがとうございました。さらばだ底辺共、また会おう!