√3は3の倍数である

数弱は焦っていた。テスト終了まで、残り時間はわずか。依然として埋まらない解答欄。何か、何か書かなくては。数弱は、無心でシャープペンシルを走らせた。最後の気力を振り絞る。そこでテスト終了を告げるチャイムが鳴り響いた。——やりきった。白い解答欄の中で、『n=√3α(αは整数)よりnは必ず3の倍数となる』、この文字列が一際輝いていた。

再会後

先日再会した男と遊びに行くことになった。久々にバドミントンをやって、その後飲む予定。

同窓会の後男から「この間金出してもらったし飯おごるわ」と連絡があり、だいたいスマホにかじりついているインターネット依存症の私は「やった~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」と三秒後に送りたかったが大人なので自重した。即既読即返信でビビらせて引かれたくない。最低でも十分程度時間を空けてから返信するようにしていた。もう二度と友達に戻れないんだ……と絶望していたので、こうしてまた連絡が取れるようになったのは本当に嬉しい。下手なことをしてまた中学高校時代のように気まずい感じになったらいよいよ精神的に耐えられないので、とにかく慎重に言葉を選んだ。

この私がラインの返信なんぞで悩むのはなかなかの異常事態である。店の希望ある? と言われて、またお前と遊べるなら公園の水でかまわん……と思っていたが重すぎるので「酒さえあればどこでも良いよ笑」みたいなことを送った。なにわろてんねん。

男が店を選んでくれて、席を予約してくれた。夜から飲む予定だったから、せっかくだしその前にバドミントンやろうぜ、と誘われた。男も私もバドミントン部なのだ。懐かしすぎ! 絶対楽しいじゃん!

当日の集合について確認するため十分経過(即既読即返信防止)するのを待つ。地元の最寄り駅から一緒にラウンドワン行って、その後酒飲んで帰るかぁ~くらいに計画していた。

待っていると十分は意外と長く感じる。

で、その間に冷静になった。

バドミントンやってから飲みに行くってことは、集合から飲みに行くまでの間は完全にシラフだ。え? よく考えたら酒もなしにどうやって男と喋れば良いんですか?

バドミントン中は良いだろう。基本的に勝負事が好きなので、忖度無しで勝ちに行くつもりである。でも移動時間はどうだろう。やることがない。話題にも限界がある。

「今度同窓会やるんだけど来ない?」というメッセージすらハチャメチャに酒を入れ周囲に煽られやっと送れたのだ。同窓会で隣になって話したのもせいぜい数十分程度、周囲のアシストつきである。マジの一対一になって、それも結構長時間で、今更何を話せば良い? まともに話すことができたのならこんなことにはなっていない。中高六年の間に話し合って友達に戻るなりなんなりしている。

というか、先日の同窓会では男にいらんことをたくさん言った。県外就職と聞いて今生の別れだと勘違いし(後日月一で地元に帰ってくることが発覚した)、酒も入っていたので絶対に言わなくても良いようなことを平気で口にしていた。周囲に「結局当時男のこと好きだったの?」と聞かれて「めちゃくちゃ好きだった!」と公言し、男に「彼氏いないの?」と聞かれて「お前のせいでトラウマになったからおらんわ!」とキレたりしていた。そして最悪なことに途中から友人の介抱に回ったのでアルコール量が足りておらず、大半の記憶が残っている。ただでさえシラフで会うのは緊張するのに、直近で恥の記憶があっては顔向けできるはずもない。

そして私がはじき出した答えは「当日って現地集合で良い?」だった。これなら絶対に気まずくなる移動時間の共有を最小限に留め、最速で酒を入れることができる!

そして現在男からの返信が途絶えている。私変なこと言った!?泣 でも最寄り同じなのに向こうで合流って確かに変じゃね!?泣 もうわからん泣